断片1 旅の途中・幌馬車にて


雰囲気漫画が描きたい、と以前からボンヤリ思っておりました。昔からとにかく変な勢いのギャグ漫画ばかり描いており、もっと澄んだ気配の爽やかな何かをモノにしたいと思ったのかもしれません。
最初のページは元々一枚絵でした。ラフを描いたあたりで、これは続けたいぞと強く思い漫画のネームを切り始めました。滾る気持ちに追い立てられた見切り発車でした。初期のギャグ漫画(今となっては若干キャラが違う気がしますが多少のブレも生なましくてよいとしておきます)はその制作中に描いていたため、設定をほのめかす内容があります。そちらではほのめかすに留まっていた設定を、このシリアス漫画ではちゃんとはっきり打ち出して話を展開しようと考えていたのですが、進めていくうちに「これじゃないな」と…。情報を出そうと意気込みすぎて、一番描きたかった雰囲気成分が薄いぞと。現行の9〜15ページまでの内容は、初期ネームにおいては7〜8の2ページであっさり終わり、先へ先へと足早に進行していました(色っぽい展開もありませんでした。ギャグ漫画では色っぽいのもギャグの文脈で間違いないのですが、個人的に赤裸々なエロ表現自体にある種の笑い要素――おそらく冗談まじりのサービスシーンとしての刷り込み――を感じ取ってしまうため、真面目な漫画をやるならできるだけ硬派にと無意識に排除しようとしたのかもしれません)。そんなに硬くなって急ぐ必要はないのではないか? 二人の旅の目的は、むしろ幕間のような些細な出来事こそが動機と密接に関わっているのではないか。であれば、二人にしかわからない情報の上で交わされるやりとりこそもっと濃密にページを割くのが妥当ではないか。何度か直すうちに描きたかった雰囲気漫画として納得のいくテンポや情報量になったので、そこでようやくある程度絵を整えて公開へと漕ぎ着けることができました。2018年3月末頃です。1p目のラフを描いたのは確か2017年4月頃だったので、まるっと1年程展開を探っていたことになります。遠回りでしたが、この漫画で二人に流れるふしぎな時間のペースをつかみ、「モノにしたかった済んだ気配の爽やかな何か」の正体が単語で表せる程度には見えてきました。おそらく情だったのだと思います。
公開後、ありがたいことにこの漫画への感想をいくつもいただきまして、創作をする前などによく読み返しております。贈られた言葉の一つひとつによってこの作品が何者であるかということが、はっきり輪郭を得ていく心地です。ありがとうございました。

18.12.18